沼津市東名・新東名周辺産業拠点形成へ

令和5年10月3日(火)

沼津市は来年度、東名と新東名の両高速道に挟まれたエリアへの企業誘致を本格化させる。市街化調整区域となっている土地利用の要件を大幅に見直す。10月に本体工事が始まる新貨物ターミナルも至近に完成するため、市は鉄道貨物の利用と合わせ産業の拠点化を急ぐ。

県東部では沼津市と同様、富士や裾野、長泉の各市町も両高速道による首都圏との利便性を売りに誘致を加速している。沼津市は「市北部における市内外企業からの工場用地などの需要増に対応するため」(まちづくり指導課)とし、今後、自治体間で競争が激しくなる可能性もある。
 市街化調整区域の開発行為など審査基準を一部改正する。従来は事業拡大を目的に沼津市内に全面移転する製造業が対象で、市内での一定年数の操業実績などが要件だったが、これらを除外する方向。製造業の工場のほか研究所と情報通信業の拠点を対象に加え、市外からの移転や新規立地の確保を目指す。一部改正案は23日から11月21日まで市民から意見を募り、2024年2月に施行する予定。
 現場は都市計画道路「片浜池田線」の沿道ゾーンで、産業立地を進めるエリアと設定。周辺では工業団地が稼働している。まとまった土地が確保でき、長泉沼津(新東名)と沼津(東名)の両インターチェンジと近くに二つのスマートインターチェンジがあり、企業のニーズに応えられると判断。将来的には両高速道と新貨物ターミナルができる原地区を結ぶ東駿河湾環状道の計画もある。
 企業誘致を担当する市産業戦略推進室の増山竜生室長は「周囲には高速道や主要道路などの交通の結節点が多い。環境を整えたい」と話す。

 記者の目=危機感の表れ 挽回なるか
 沼津市は企業誘致に不熱心―。複数の経済人が述べていた。相談してもできない理由から入り、意欲がそがれたという。周辺の市町では新たな企業進出の動きがある。二つの高速道を擁する利便性は沼津と同じ。違いの要因は明らかだ。
 一方で、沼津への大型商業施設進出のうわさも複数ある。移住者も激増している。沼津のポテンシャルの高さを裏付けている。
 他自治体の企業誘致担当部署は情報収集と営業活動に余念がない。今回の沼津市の方針は強い危機感の表れと言えるが、要件を見直して終わりではない。これを始まりとして、市の姿勢と意欲を見極めたい。