県営住宅 保証人廃止を検討

令和5年5月13日(土)

静岡県は県営住宅の保証人規定について、廃止も視野に在り方の検討に入った。
保証人の確保が難しい身寄りのない高齢者が増える中、国は入居の円滑化を図るため、全国の自治体に規定の削除を要請している。
専門家らでつくる懇話会で議論がまとまれば、年内にも条例改正案を県議会に提出する。
県営住宅を含む公営住宅は住まいのセーフティーネット(安全網)としての役割を担う一方、家賃滞納への懸念や緊急連絡先の把握を理由に保証人規定の見直しが進まず、単身高齢者らにとって入居の障壁になっている。
県によると、昨年4月1日時点で、県内で規定がないのは熱海市と森町。
今年3月には川根本町が廃止に踏み切った。
県は2021年4月、保証会社に委託料を支払えば連帯保証人が不要になる家賃債務保証制度を導入した。
保証委託料は1年目が家賃・駐車場代1カ月分の50%で、2年目以降は年1万円。
単身高齢者など一定の利用があるものの、入居者にとっては保証委託料の支払いが負担になっている。昨年4月1日時点で19都道府県が保証人を求めず、11府県が同制度を導入している。
県は4月下旬に居住支援法人や県住宅供給公社、大学教授らでつくる懇話会を設置し、保証人規定の在り方について議論を始めた。県営住宅の入居率は13年の87・5%から22年には77・3%まで低下する一方、入居戸数に占める単身高齢者の割合は18・5%から31・3%に上昇している。
こうした入居世帯の変化も踏まえ、7月に対応を取りまとめる方針だ。
保証人規定を廃止する場合には条例を改正し、24年4月の施行を視野に入れる。
国は保証人規定を入居の要件にしないよう自治体に通知しているが、「家賃の滞納が増える可能性がある」などとして多くの自治体が応じていない。
総務省中部管区行政評価局は「東海4県でみると静岡県の自治体の動きは低調」と指摘する。
県が規定廃止を打ち出すことで、他の市町に波及するとの見方もある。
県公営住宅課の冨田征範課長は「少子高齢化が進み単身世帯が増加する中、もう一歩踏み込んだ対応が必要かどうか、さまざまな議論を踏まえて検討していきたい」と話す。
懇話会では、単身入居者の下限年齢や子育て世帯の要件緩和といった入居者資格の見直しについても検討する。