六つの精進

令和6年1月20日(土)

六つの精進とは

京セラ創業者である稲森和夫氏が唱えた6カ条。人生や仕事において、重要となる実践項目をまとめあげたものです。

1.誰にも負けない努力をする

より充実した人生を生きていこうとするならば、人一倍努力を払い、仕事に一生懸命打ち込まなければなりません。
自然界に生きている動植物はみな、必死に生きています。我々人間もまた、まじめに、一生懸命に働くということが、生をうけたものとしての最低の務めであろうと思います。

そのためには、まず仕事を好きになることが大切です。好きであればこそ仕事に没頭することができます。またよりよいものを目指そうという気持ちも生まれ、自然に創意工夫をするようになります。
仕事に惚れ込み、夢中になり、人並み以上の努力をする。この誰にも負けない努力がすばらしい結果をもたらしてくれるのです。

2.謙虚にして驕らず

中国の古典に「ただ謙のみ福を受く」という言葉があります。人は謙虚にして初めて幸福を受けることができるという意味です。

世間では、他人を押しのけてでも、という強引な人が成功すると思われがちですが、決してそうではありません。成功する人とは、内に燃えるような情熱や闘魂を持っていながら、謙虚で控えめな人物です。このような謙虚さを持って生きることが大切なのです。

しかし、そのような人でも、成功し、高い地位につくと、謙虚さを忘れてしまい、傲慢になることがあります。若い頃は、謙虚に努力をしていた人が、知らず知らずのうちに慢心し、人生を踏み誤ることさえあるのです。

「謙虚にして驕らず」。このことを、深く心に刻んで、生きていくことが必要です。

3.反省のある毎日を送る

一日を終えた後、その日を静かに振り返り、反省をする習慣を持ちましょう。

例えば、その日の行いが、「人に不愉快な思いをさせなかったか」「不親切ではなかったか」「傲慢ではなかったか」「卑怯な振る舞いはなかったか」「利己的な言動はなかったか」と振り返り、人として正しいことを行えたか問いかけてみます。
もし自分の行動や発言に反省すべき点があれば、改めなければなりません。

反省のある毎日を送ることは、人格を向上させ、人間性を高めていくことにつながります。日々の反省が、自分の悪い心を抑え、よい心を伸ばしてくれるからです。
常に進歩向上できる人は、「反省のある毎日」を送っている人なのです。

4.生きていることに感謝する

人は自分一人では生きていけません。空気、水、食料、また家族や職場の人たち、さらには社会など、自分を取り巻くあらゆるものに支えられて生きているのです。
そう考えれば、自然に感謝の心が出てくるはずです。不幸続きであったり、不健康であったりする場合は「感謝をしなさい」と言われても、無理かもしれません。それでも生きていることに対して感謝することが大切です。

感謝の心が生まれてくれば、自然と幸せが感じられるようになってきます。生かされていることに感謝し、幸せを感じる心によって、人生を豊かで潤いのあるものに変えていくことができるのです。
いたずらに不平不満を持って生きるのではなく、今あることに素直に感謝する。その感謝の心を「ありがとう」という言葉や笑顔で周囲の人たちに伝える。そのことが、自分だけでなく、周りの人たちの心も和ませ、幸せな気持ちにしてくれるのです。

5.善行、利他行を積む

中国には「積善の家に余慶あり」という言葉があります。これは善行を積んできた家には、よい報いがあるということです。

世の中には因果応報の法則があり、善きことを思い、善きことを実行すれば、運命をよき方向へ変えることができます。当然、仕事もよい方向へ進めていくことができるのです。
善きこととは、人に優しくあれ、正直であれ、誠実であれ、謙虚であれ、などという人として最も基本的な価値観です。

昔から「情けは人のためならず」と言われていますように、善きことを積み重ねていくことで、私たちの人生もよりよいものとなっていくのです。

6.感性的な悩みをしない

人生では、誰でも失敗をしますし、間違いを起こします。しかし、そうした過失を繰り返しながら人は成長していくのですから、失敗をしても悔やみ続ける必要はありません。

「覆水盆に返らず」という言葉がありますように、一度こぼれた水は元に戻りません。起こってしまったことを、いつまでも思い悩んでいても何の役にも立ちません。それどころか心の病のもとになり、人生を不幸なものにしてしまいます。

自分のどこが悪かったのかは反省しなければなりませんが、十分に反省した後は、くよくよせずに新しい道を歩み始めることが大切です。
済んだことに対して、いつまでも悩み、心労を重ねるのではなく、理性で考え、新たな行動に移るべきです。そうすることが、すばらしい人生を切り拓いていくのです。

盛和塾第16回全国大会(2008年7月17日)より